FIREムーブメント
FIREムーブメント?
タイトルを見て何のこっちゃと思われた方に説明したい。FIREとは、「Financial Independence Retire Early」の略語である。
訳する「経済的な自立」と「アーリーリタイア」という意味だ。その言葉の通り、「経済的に自立してアーリーリタイアを目指す」ということである。仕事に縛られないことで圧倒的な時間的自由を得ることを目指す活動だ。
Fireには「クビ」という意味もあり、リストラされるときに上司から使われる言葉でもある。その言葉を自らリタイアする際に使うことが皮肉な表現になっている。
このブログを読んでいる方は知っていると思うが、私もアーリーリタイアの願望が非常にある。明確にその目標を持ち出したのはごく最近、30を迎えた時からくらいだ。
経済的な自立は、時間的な自由を求めただけの行為ではなく、リスクマネジメントでもある。
経済的に依存している相手からの命令には基本的に従うしかない、と言うのはわかってもらえるかと思う。
私はこの状態を、泳ぐことができない人が船に乗せてもらっている状態のようだと昔から思っている。そのような状況では、船に乗せてもらったら船長の命令には従う以外にない。降ろされると海に溺れてしまう。見渡せば船は沢山あるが、船に乗れば船長の言うことを聞くしかない状況には変わりがない。
だから、船に乗せてもらったあとは、頼まれた仕事はなんでも請け負うしかない。そうすることで、自分は船に乗せてもらっているが、向こうも自分を船に乗せることで利益を享受する。こうして持ちつ持たれつの関係が出来上がる。だがまだ相手の立場の方が強い、降ろされると圧倒的に自分の方が大きく困る。
だから、従順に船の運航のために仕事をしつつ、(誰にも迷惑をかけることなく)自分の船を用意する。FIREはそのような行為だ。
これは船長への裏切りと考えるべきではない。人生の最終盤まで、他人に支配された生き方を甘んじて受け入れるほどの覚悟、恩義を他人のために持つべきではない。いずれは自分の意思により、その船に乗り続けるかどうか選択することができる状態にするべきだ。お世話になった相手には感謝すべきだと思うが、自らの人生まで差し出すのは引き合わない。
他者に経済的に依存しない状態を目指すべきだ。FIREを達成することにより、自由な時間を手に入れることができるとともに、他者に依存するリスクも軽減することができる。会社から望まない部署の異動や転勤の打診をされ、受け入れざるを得ない状況は果たして好ましいのか考える必要がある。
家族を持ったり、家をローンで買うのは自らに重りを課す行為でもある。いきなり海外に転勤を言い渡されても、望まなくても断ることができない可能性を高める。
これはその人の人生の選択であるが、経済的に他者に依存するのがどれだけの危険性をはらんでいるのか、意識するべきである。
さて話を戻し、FIREは経済的に自立することが目標であるが、達成基準はどのようなものか?
それは、年間の必要資金の25倍を貯めることである。これは年利4%で資産を運用する前提であり、不労所得>必要資金となる資金だ。こうなると理論上はお金が減らない。
これは結構単純な思想だから、これまで実践している人もある程度いたことが想像される。ただ、現代ではSNS等でより一般的な考え方として共感され、認知されだしてきた。仕事に人生の大半を支配されなくなるような選択肢を持つのは、健全である。
基本的にはリスクを取らずに倹約、貯蓄、資産運用を基本方針としてお金を貯めるものだ。だからただのサラリーマンでもすぐに始められる程にハードルが低い。特に、資産がそれほどない場合にはまずは倹約を始めるだけだ。
これまでは机上の空論だが、実際の達成者の例を見ていきたい。まずはこの活動の提唱者を紹介したい。
提唱者はアメリカの夫婦である。彼らはそれぞれ年収約750万円程度のソフトウェアエンジニアだったそうだ。アメリカなので年収は若干高めだが、日本でも不可能なレベルではない。徹底した倹約をすることにより、稼ぎのほとんどを投資に回し、30歳の時点で2200万円の家と6700万円の金融資産を保有していたそうだ。
この時点で約270万円/年の運用益が得られ、生活費が賄えると判断して退職を決める。「老後があと55年もある」とは彼らの弁。仕事を辞め、一連の活動をブログにしたことでさらに資産も蓄えたそうだ。結局は仕事を辞めることで、自分の余剰の時間が大幅に増え、好きなことをやってお金を稼ぐ余裕もできたと言えるだろう。
正のスパイラルとも言える。人生をウイニングランしながら謳歌することに成功した夫婦でもある。
もう一人紹介する。その方は、ウォール街の金融関係の仕事に7年携わり、225万ドル貯めてリタイアした女性。小中からリタイアに関する文献を読み漁り、ハーバードを学生ローン無しで3年で卒業し、28歳にしてFIREを達成したそうだ。毎年30%の昇給が得られるほどのハードワークをし、さらには給料の70%を貯蓄に回していた。これは能力が高い人に限られるかもしれない。だが能力が極めて高い人も同じことを考えている。
上記二人は金融資産をそれなりの額持っているが、超お金持ちと言うほどではない。あと何年も継続して働いていれば、もっとお金を得ることはできたのだろうが、FIREは決して金銭的、物質的な豊かさを目指すものではない。時間的な豊かさをファーストプライオリティとし、人生を謳歌しようとする考えである。
今の時代、楽しく生きるのに本当にそれほどお金が必要なのか、またそのために自分の人生を削ってまで働くべきなのか考える人が増えている。ただ仕事をすることを当たり前だと思ってはいけない。諦めなくても、大人になっても目標を見出すことはできる。
ある程度のところまではお金を軸に考え、お金に縛られないところまで頑張り、あとは自由が待っていると希望を持つ。私と同じく、これまでの人生をレールに乗ってきただけの人も、もし興味があればFIREを検討してみて欲しい。皆様と気持ちだけでも一緒に頑張りたい。
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