絶対に潰れない企業の社員
インフラを担っていたり、すでに完成されたシステムが日本の全てのシェアを持っている企業。事業の性質的に新規参入がなく、競争の必要が現在も将来もない企業。
絶対潰れない企業はないというのは当たり前なのだが、恐らくもう潰れないだろう企業はある。
潰れにくい企業にランキングをつけたとして、日本で10本の指に入るくらいの企業に勤めている友人がいる。彼が務めている企業はIT系の企業である。日本の主要機関のシステムを数多く抑えているため、もう潰れることはないだろうと言われる。趣味が高じて出会い、たまに飲んだりして話を聞くこともある。
彼は私と同じ年であり、同じく理系院卒であり、仕事への考え方も非常に近い。仕事が嫌いすぎて総合職をやめ、一番暇な部署に志願して転向している。自分の中に完全な軸を持っており、信念で動くタイプだ。
そこでの話が非常に興味深いのでお話ししたい。
まず、その部署ではそもそも仕事があまりない。転職を繰り返してたどり着いた人もいるようだが「ここまで放置される部署は初めてだ」と驚くほどの環境のようだ。
彼は来週やることが何もないとたまに言っているが、あからさまにはサボれないから何となしに時間をやり過ごす感じになる。
それはそれで結構辛いような気もするが、仕事がないことを本心から喜んでいる。とりあえず資料を読んでおけば勉強にもなるそうだから良いそうだ。
ざっくり彼の標準的な1日をまとめると下記のようになる。
始業は9:30からだが、大体いつも9:45-10:00の間に会社に着く。そんな人も結構いるから特に文句は言われない。仕事が多くないから事実上誰も困らない。
何となく資料を読んだりして、15分フライングして11:45には昼食をとる。そして12:00-13:00までは睡眠タイムだ。14:00-16:00までは会議があり、それからのんびり18:00前まで議事録を作成したりなどして展開する。そして18:00ぴったりには退社する。
彼の話を私なりにまとめると、概ねこんな感じと推測している。やることがまるで何にもないということはなさそうだが、普通のサラリーマンに比べてかなりゆとりがある。仕事に忙殺される立場から解放されている。
「1分も残業したくない」とは彼の名言の1つだ。本当にそれができる環境にある。
何かを生産するような作業はあまり多くはない。仕事がないのを喜んでいるタイプの人間の集まりだから、誰も自ら何か動いてやることはない。
仕事は抑えつつ、給料はそれなりにもらい、自分のプライベートを大切にしたい人にとっては最高の環境なのではなかろうかと思う。豊かさを極めた企業の行き着く姿を垣間見た。
そんな彼だが、つい先日は珍しく海外の支社に行ったようだ。どうやら視察が目的とのことらしい。特にミッションがなさそうなので、おそらく予算消費の関係と推測される。
上司と2人で海外支社を視察に行ったそうだ。どちらも全く英語はできないそうだが、一応英語での質問事項なども事前に用意していたようだ。向こうのお偉いさんに対しての質問となる。
そして、彼が事前準備をしている際に上司に相談に行くと、
「あなたが分からないことを私に聞かれたって、私も何もわかりません!!」
と言われたそうだ。上司としての責任と威厳を完全に放棄した、ある意味清々しい言葉ですらある。
「冗談のように言っていたが、おそらく冗談ではないだろう」とは彼の言葉である。
ちなみに向こうの人に、「大切にしている理念はなんですか?」と英語で質問したところ、バーーーーッと答えが返ってきて全く理解できなかったそうだ。
とりあえずセンキューと言っておいたらしい笑
そして、そのあとは質問をするのも諦めてとりあえず時間をやり過ごしたと、もう2度と行きたくないとも言っていた。
その会社のその部署は全体的にこんな感じらしい。黙っていれば売り上げが入るような、超安定したような会社であれば、それでも成り立ってしまうのだ。
深夜まで飲んでも明日休めば良いだけだからと一緒によく飲んでいた。
大学生が授業がだるいからサボる感じを、社会人になってもずっと続けられる。羨ましいかはちょっと賛否が分かれそうだが、仕事に忙殺されている時はやはり羨ましい時がある。
ただし、そういった会社を事前にリサーチして就職し、実際に望んだ通りの働き方を実現させているのはある意味では彼の実力だろう。働き方改革を何年も先に先行していたということか。