検討しますは検討しない

「検討します。」は日本企業のサラリーマンがメールに使用するど定番中のど定番フレーズだ。ビジネスメールでよく使用する動詞ランキングがあれば、ベスト10には食い込んでくる言葉であろう。

この考え方に関してはコーパスという、あらゆる場所で使用された語彙の統計がデータベース化された言語資料なるものがある。とりあえずはそれに関しては別の機会にお話しすることにしたい。

さてお題を戻して「検討する」という言葉に対しての話題だ。話がそれるのは私にとっては日常茶飯事だ。ご容赦いただきたい。

何らかの提案に対して、本当によく考える場合にも使用することができるし、ほぼ断ることが決まっている時に、即答で拒否しない心遣いのようなニュアンスでもある。場面にもよるが、どちらかといえば後者の方の意味でより多く使用されている気がする。受け取り手からすればあまり期待が持てない言葉であり、使用者からすれば万能に近い言葉である。

営業が何かの製品を売り込む際、それがよく知った顔なじみの相手であれば尚のこと。検討しますとだけ返事がきた場合、現時点ではほとんど見込みなしかもしれない。興味があれば納期とか、数量割引とか、直接会って話をしたりと具体的に話が進むはずである。

「前向きに検討する」とかグレードアップした言い回しもあるが、何れにしてもその言葉が脈ありかどうかは文脈や相手とのパワーバランス次第という感じだろうか。こちらへの配慮を見せているだけかもしれない。

この言葉が社内で使用された場合、面倒だしやりたくないけど、常識的に断ってはいけないようなことを、先延ばし先延ばしにのらーりくらーりと「聞くだけ聞くけど実行しないよ」というスタイルの使用者もいるだろう。色々な場面で多くの人が使いまくるフレーズである。

日本人が英語でビジネスメールを書く際、どうやったって日本語→英語の変換作業である。そうすると、かなりの回数「検討する」という言葉が頭の中によぎっているはずだ。英語としては難しくはない、直訳すれば「I’ll consider it」である。間違いなく滅茶苦茶な回数使用されているはずだ。ただしこの言葉には注意しなければならない。

「検討」という意味を日本語の辞書で引くと、「よく調べ考えること」となる。

まあ本当に検討するところまでは嘘ではないかもしれない。しばらく時間が経ってから向こうの提案が必要だと判明することもあるだろう。ただし日本の場合では、検討した結果向こうの要求や営業提案を受け入れないことを連絡したり、相手に即座に連絡することはそれほど求められないはずだ。「検討します」と連絡がなされた後に連絡がこないことは、暗にやんわりとした拒否を示すことにもなり得る。

私も生命保険の営業のお姉ちゃんに対して、(いつかは必要と考えることもあるだろうから)検討しておきます。とよく言ってしまっている。「今は」必要ないという結論の先延ばしでの言葉としている。

可愛い子だときっぱり断れないのは男のさがか。

「検討する」という言葉は「よく調べ考えること」、英語圏でもほとんどその通りの意味だ。ただし、英語圏でその言葉がビジネスで使用された場合「よく考えて回答する」というニュアンスまで含まれることに注意していただきたい。

I’ll consider it.と相手に対して連絡をした場合、相手は早ければもう次の日には回答を期待している。そこで、

It’s currently under review(いま検討中です)とついついはぐらかし、

再度追撃が来た時に

I’m afraid I have to decline your offer とか

we’ve decided not to accept your offerとかとか

結論まで結局求められたりしてしまったりする。相手にとっても時間の無駄なので、本当に断る場合は最初から断った方が良い。

将来的に可能性のあることであれば、断り文句を入れた後にIf it is necessary in future, we’ll contact you again.(必要な時が来たらまた連絡する)としても良い。

何れにしても結論を出せる場合はすぐに出し、お互いの時間を無駄にしないようにするべきだ。相手の時間をリスペクトすることを重要視した方が良いことは多い。

もちろん本当に検討する場合はI’ll consider it としても良い。

また、少しでも日本語の検討するという意味をもたせたい場合はI’ll think about itとすると良いと思う。これはネイティブの人からすればそれほど期待できない、日本人の検討するに近い表現のようである。

言葉の齟齬によるミスコミュニケーションを、「日本語って難しい」とか「文化の違い」という人が良くいると思う。確かにその通りと思うのは間違いないが、そこで立ち止まってはいけない。大抵の場合は実力不足や知識不足も原因だ。

他の人を慰める際にその言葉を使用するのは良いとは思うのだが、自分に対してはその言葉を使わず、反省&改善を第一に考えるべきである。

検討しますは検討しない” に対して1件のコメントがあります。

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